身体のどこかに、なにかしらの気になる症状がある方を有訴者と言います。
ここには、病気やけがなど、ある程度原因がはっきりとしているものだけではなく、日常生活でのちょっとした不調がある方も含まれています。
日本人の有訴者のトップは「腰痛」です。
また腰痛は、通院理由でも常に上位にあがっており、20代後半から徐々に増え始め、50代以降は増加率も大きくなっていく傾向にあります。
今回は、こんなにも多い国民病とも言うべき腰痛のメカニズムについて、腰椎の形状の観点からお伝えしていきます。
出典:総務省統計局/国民生活基礎調査 令和4年(2022年)
腰痛になりやすい腰椎の形状とは
腰痛と腰椎の関係については、以前のブログ(腰痛のメカニズム)でも少し触れておりますので、ぜひお読みいただけたらと思います。
その中でもご説明しておりますが、腰椎は脊柱(背骨)の一部です。
人の脊柱は生理的湾曲と言って、身体への負担を軽減するため、あらかじめS字を描いています。
その中で腰椎は前側に向かって湾曲をしています。
腰痛になりやすい方はこの腰椎の形状に弯曲が少ない方がほとんどです。
姿勢によって腰痛になりやすいのは
腰椎の湾曲が少なくなってしまう要因として考えられる事は、遺伝や過去のけがなどの
影響もありますが、生活習慣や日常の癖など、意外と身近な要因も多く存在しています。
では腰椎の湾曲が少なくなりやすい方はどんな方なのでしょうか
①デスクワークやスマホの利用頻度が高いなど前のめり姿勢が多い
②家事や仕事などで前かがみの作業が多い
②足をあまり上げずに歩く
③ヒールや底の高い靴を履くことが多い
④無意識に身体をかばっている
このような身近な要因に共通している事は姿勢です。
どれも、前かがみで背骨と太ももが「く」の字のように近づき、股関節が押しつぶされてしまっています。
このような姿勢では、股関節の可動域が制限されてしまい、
さらにこの状態が日常的に繰り返されると、股関節が固くなってしまいます。
実はこの姿勢こそが、腰痛の原因の1つになっているのです。

図1の研究では姿勢によって腰への負担がどのように変わるのかを数値化しています。
これによると【 立位 < 座位 < 立位前かがみ < 座位前かがみ 】の順に腰に負担がかかっていることが読み取れます。
見方を変えると、股関節と太ももが近いほど、腰への負担が大きくなっている事がわかります。
股関節と太ももが「く」の字になって近づく事で、腰椎にストレスがかかり、腰痛のリスクを高めているのです。
しかし今回お伝えした前かがみによる股関節の固さを解消できれば腰痛発症のリスクは格段に減ることになります。
もちろん、前かがみによる股関節の固さだけが腰痛の原因ではありませんが、こういった方が一定数いらっしゃるのは、私の経験上からも事実だと思います。
しかし、多くの健康保険範囲内での治療の場合、腰への直接のアプローチが多く腰痛の根本的な解決にはつながっていないことがあるように思います。
では、日常生活での姿勢を少し気をつけたり、セルフケアを行う事で、長く通い続けている通院の頻度を減らし、腰痛の軽減もできる可能性があるとしたらどうでしょう。
次章では、特に半年以上の通院歴があり確たる原因が見当たらない方へ、ケア方法を提案していきたいと思います。
参考文献:椎間板への圧力測定
参考文献:前かがみ姿勢による椎間板への負担
股関節「くの字」を解消するケアと予防方法
身体に負担がかかる動作や姿勢を繰り返すことによって、本来の状態からずれてしまった形が身体にインプットされてしまい、腰椎への負担が蓄積され、やがて痛みとして現れる。
そんな状況の改善として「くの字姿勢」解消方法を提案します。
セルフケアは、歯を磨くことと同じように、日常的に繰り返し行うことで痛みの軽減と予防の効果が現れます。
すぐに効果が表れる方もいれば、日々行うことで少しずつ効果が出てくる方もいます。
気負わずご自身のペースで取り組んでいただきたいと思います。
◆お尻を伸ばして、股関節の可動域を広げるケア
お尻を伸ばすことで股関節の可動域を広げていきます
①まず椅子よりも少し高め(10㎝~15㎝)の台に足をのせます
適当な高さの台がない場合は同じ位の高さでも構いません
②なるべく太ももとふくらはぎの角度を直角にしていきます
難しい方はのせるだけでも大丈夫です
③膝頭を極力身体の前にくるようにし、かかととくるぶしの側面をしっかりと台につけます
このとき膝は浮いても構いません
④上体を少し前に倒しながら、少しでもおしり側が伸びている感覚があれば良いです
◆太もも内側の付け根を伸ばして、股関節の可動域を広げるケア
太ももの付け根を伸ばすことで、股関節の可動域を広げていきます
①身体は正面を向き足は身体の横に出します
②太ももの付け根(股関節あたり)が伸びている感覚があれば良いです

股関節の付け根が伸びている感覚

太もも内側が伸びている感覚
◆お尻にタオルを当てて股関節のくの字を防ぐケア方法
お尻に丸めたタオルを当てて股関節のくの字を防いでケアしていきます
①タオルを二つ丸めてその上に座ります
お尻の外側半分位がタオルに乗っているようなイメージ
②そのまま仰向けになり、なるべくタオルをお尻に寄せます
タオルが腰骨の位置より上体側にならないように注意
③膝を立てて腰が楽になっていれば、その位置でキープします
時代は変わっても変わらない「くの字姿勢」
腰痛の歴史は古く紀元前からあるとされ、マッサージ師や指圧師という職業は700年代からあったとされています。
昔は農耕や家事での「くの字」姿勢、現代ではデスクワークやスマホ操作での「くの字」姿勢。
時代は変わっても、人々の日常生活は常に腰痛リスクの高い環境にさらされています。
腰痛によるクリニックや病院への通院は後を絶たないのが現状です。
また、腰痛に関連した補助具やサプリなどの商品はどんどん開発され、人気となっています。
しかし私としてはこれらは根本改善につながっていないと思っております。
腰痛に関連した補助具やサプリに頼るのは極力避け、なぜ腰痛になっているのか?
そのメカニズムを知っていただき、ご自身でのケアも取り入れる事で、効果がより高くなり、悩みの解消につながると私は考えております。
もちろんご自身のケアで賄えない場合は専門の治療院や整体院、徒手療法の専門家にご相談してご自身でもケアできるレベルにしてもらうことも大切です。
当院では腰痛に対して、腰だけにフォーカスせず、全身から腰への負担箇所を見つけて施術をしていきますので、諦めている腰痛がある方や長年の腰痛持ちでも症状の改善を目指すことができます。
気になる方はぜひ一度ご相談いただければと思います。