介護する人・受ける人 「健康寿命を守る」ケア習慣

先日、介護の現場に携わっている方から「腰や肩の痛みを訴えるスタッフが本当に多いんです」といった、お話を伺いました。
確かに、介護する側は想像以上に身体への負担が大きい作業が多くあります。
介護を続けていくうちに、腰痛・五十肩・膝痛などを抱えるようになり、さらにこれらが慢性的な痛みに変わっていった方も少なくありません。

一方で、介護を受けている高齢の方。
慢性的な膝や腰の痛みがきっかけで動くことが難しくなり、介護が必要になってしまった、といったケースもよくあることです。

こうした慢性的な痛みは、介護する人・受ける人、どちらにとっても暮らしの質をも左右する大きな悩みとなっています。
このような慢性痛。
少しでも改善することができるのでしょうか。

「慢性痛」介護する人にも受ける人にも起きている

少子高齢化が進み、介護をする人の年齢層も高くなっている昨今。
自身が慢性痛を抱えながらも、その痛みを我慢して介護にあたるなど、知らず知らずのうちに心や身体に大きな負荷をかけていることがあります。

また、介護を受けている方では、膝や腰の痛みが原因で、歩行や立ち上がりが難しくなってしまったといったケースが多く見受けられます。
この状態が続くと、外に出る機会も減り、体力が落ちてしまい、さらに身体が動きにくくなるという悪い流れにつながることもあるのです。
また、このような痛みは、転倒による骨折や認知症の引き金になる事もあります。

このように慢性痛は「介護をする人」「介護を受ける人」双方に大きな影響を及ぼしています。

〈参考文献〉
慢性的な痛みを抱える介護をする人の精神的苦痛と自己評価の低さについて(オーストラリア高齢者研究調査)
慢性的な痛みがある高齢者はそうでない高齢者と比べて介護(障害)になるリスクが高いことについての研究報告(アメリカ:ボストン研究所)
慢性痛が移動機能の低下を助長させることについてや高齢者介護予防のための研究報告
(厚生労働科学研究成果データベース)

介護が必要になる「きっかけ」

慢性痛は第5位の関節疾患に含まれていますが、それ以外の項目にも慢性痛が関連しているものが多くあります。

 

 

 

 

① 認知症
慢性的な痛みが続くと、体を動かす機会が減ったり、ストレスが増えるなど、記憶や判断力に悪い影響を与えることがあります。 
また、痛みによる不眠や気分の落ち込みも、認知症のリスクにつながります。

② 急な身体の衰えや弱り
痛みのせいで動く機会が減ると、筋力や骨の強さが落ちてしまいます。
その結果、体が弱くなったり、転びやすくなったりします。
また、食欲の低下や人との関わりが減ることも、弱りの原因になります。

③ 骨折や転倒
膝や股関節に痛みがあると、姿勢が不安定になり、転倒しやすくなります。 
転んでしまったあとも痛みが続くことで、身体を動かす機会が減り、さらに身体が弱ってしまい、再び転倒してしまう、という悪循環に陥ることもあります。

このように、慢性痛は単なる「身体の不調」だけではなく、介護が必要になってしまうきっかけにもなってしまっているのです。

慢性痛の治療

腰痛や五十肩の治療では、痛み止めの薬や湿布などの処方が多く、またサポーターなどの使用なども多く行われています。
しかし、薬には副作用のリスク、サポーターの長時間使用は、筋力低下などを招くリスクがあり、結果として症状をさらに悪化させてしまうこともあります。

一方で、近年各国では慢性痛をひとつの独立した問題としてとらえる動きが増えてきました。
例えば、
慢性痛を「病気」として認め、薬だけに頼らず、運動、マッサージやストレッチなどのケア、更には人との交流などを通じて痛みをやわらげる方法を取り入れる。
また、介護が必要になる前から、体のケアや生活支援に力を入れ、自立した暮らしを続けられるようサポートする取り組みも増えています。

薬だけに頼らず、早い段階からケアをしていくことで、身体の痛みを慢性化させないようにする事ができるのです。

健康寿命を守るためのセルフケア

介護をしている人も、介護を受けている人も、最も負担となるのは腰痛、膝痛、肩痛です
これらの痛みは、単なる「不快な症状」では終わらず、前の章でもお伝えしたように「健康寿命」にも影響を及ぼす可能性もある症状です。

「筋緊張を和らげ」「関節を動かし続ける」これらの習慣を身につけておくことが、健康寿命を守る上で非常に重要です。
ここでは簡単にできる3つのケア方法をお伝えしていきます。

◎お尻ケアで腰痛対策

①横向きになり、お尻の横側にボールを当てます
※ボールが「痛気持ちいい場所」に当たるよう調整します

②ボールに体重を預けて、圧をかけていきます
※痛みが強すぎる場合は体重を抜いて調整してください

 

 

◎膝裏ケアで膝痛対策

①床やベッドの上にタオルを丸めて置き、その上にボールをセットします
ひざを軽く曲げた状態で、ボールがちょうど膝裏に当たる位置に脚をのせます


②脚の力を脱力させて、ボールに体重をかけていきます
痛みが強すぎない程度の圧を感じたら、そのままキープします

 

◎胸前ケアで肩痛対策
①鎖骨の下・胸の外側あたりにボールを当てます
※肩が上がらないよう、リラックスした状態を意識しましょう

②ボールがズレないよう壁に当てて軽く体重をかけていきます
胸の筋肉を刺激しながら、腕を後ろに回してキープしていきます

 

未来の負担を減らすために、今日からできること

  1. 無理のない範囲で体を動かす
    歩行や簡単な筋トレ・微運動を習慣にすることが筋力・体力の維持につながります。介護をしている人は、日々の身体への負担を減らせるように、また将来自分が介護に頼らずに生活できるように、無理せず体を動かすことが大切です。
  2. 痛みを我慢しすぎない
    痛みを我慢しすぎると、介護をする人は心身に支障が出たり、将来自分の自立を守りたい人は体を弱らせてしまう原因になります。
    「まだ大丈夫」と無理せず、早めのケアが大切です。
  3. 人との関わりを持つ
    人とのつながりは気持ちを前向きにし、活動量の維持にもつながります。慢性的な痛みは生活の制限や将来の介護リスクを高めるため、我慢せず早めにケアを始めることが大切です。
    当院では、慢性化してしまった痛みの早期改善を目指し、一人ひとりに合わせた専門的なアプローチを行っています。
    今の症状に慣れたり、我慢したりせず、まずはお気軽にご相談ください。
    参考文献:
    身体活動と認知症リスクの因果効果(PubMed)
    社会的孤立・孤独感と慢性腰痛の関連(PubMed)
    高齢者における慢性的な筋骨格系の痛みと転倒の発生 – (PubMed)

慢性痛治療院ARAI

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